Management 3.0のfeedback wrap(フィードバック ラップ)に関して
@warumonogakariさんがブログを書いてくださいました。
どうもありがとうございます(^^)
はじめに
どうも、みなさん、こんにちは。
妻の批判はアドバイスとモットーとする エンジニアリングマネージャー @warumonogakari こと かとうです。
この blogサイトに限らず、寄稿するのは何分はじめてです。PCの前で どきどき・ぷるぷるしております。どうかお手柔らかにマサカリ投げのほど よろしくお願いします。
また、エラクないのでツイートする内容は所属・関連する組織とは一切関係ありませんこと、ご承知願えればとおもいます。
さて、本稿では、Management3.0の中ででてくるコミュニケーション手法である feedback wrap と、アジャイルレトロスペクティブなど ふりかえりで用いる YWT法をとりあげ、
- feedback wrap と YWT法が似ていること、
- わかるということには、一体どういうことなのか
- 伝える前に、まず落ち着いてふりかえってみることの大切さ
といったことを述べていきたいとおもいます。
まず feedback wrapとは
まずは feedback wrapです。皆さんご存知でしょうか?
feedback wrapとは Management3.0の6つのポイントのうちの一つ Develop Competence(根源的な能力を培わせる)のなかででてくるコミュニケーション手法です。
相手に言いにくいこと・変えてほしいを伝えるために、以下のような stepを順に追って伝えると、きっとうまくいくというものです。
- 面と向かって 事実・経緯をのべる
- よかったこと、わるかったことを箇条書きにして伝える
- 自分の感情をつたえる(わたしは、~と感じました)
- (相手の)行動が継続されることによる(自分への)悪い影響をつたえる
- (相手が)行動を変えることによる良い影響を話す
- アクションを提案する
よくありがちなのは、いきなり 3の自分の感情をつたえて 6のアクションを押しつけたり、1の事実をつたえて 6で修正をもとめるパターンだとおもいます。
これだと、受け手はどうしても もやもやしてしまい、変化も一時的になりがちですよね。
なので、少しだけ手間をかけて1から6までのステップを丁寧に積み重ね相手の行動の変化をうながしていきましょうという手法と理解しています。
一方 YWT法とは
YWT法とは、日本能率協会コンサルティング(JMAC)が提唱された
ふりかえりに関するフレームワークの一種です。
- Y:やったこと
- W:わかったこと
- T:次にやること
の順で振り返りを行い、個人やチームの経験を学びに変え、次の行動につなげていく手法です。
最近では、KPTにかわって、こちらをつかってらっしゃるチームも多いのではないでしょうか。
かくいう筆者の職場もそうです。従来、KPTだと どうしても Problem の Pに過剰に反応しまい、次のアクションが Pにたいする対処療法になっていました。
そこで、まず事実をならべ、そこから内省をうながし学びをえるように かえるため、新人・2年目のメンバ(以下、わかものと略)中心の朝会で 実験的に導入してみました。
実際、YWT法を導入してしばらくすると、メンバから自然にわからないことも共有されるようになり、わからないことがわかったとして、
現在、以下のような項目順で いい感じで共有されるようになっています。
- Y:やったこと
- W:わかったこと
- W: わからないこと
- T:次にやること
とくに、わかものの場合、最初は 知らないことだらけなので、そもそも わからないことがわかりません。わからないことがわかって(言い換えると 分解されて)、さらに その分解された わからないことがわかる、その結果 経験が まなびにつながり 自信につながってきているようです。
似ている YWT法と feedback wrap
さて、YWT法と feedback wrap をならべてみましょう。
YWT法 | feedback wrap |
やったこと | 面と向かって 事実・経緯をのべる |
わかったこと | よかったこと、わるかったことをリストアップして伝える |
自分の感情をつたえる | |
悪い影響をつたえる | |
行動を変えることによる良い影響を話す | |
つぎにやること | アクションを提案する |
どうでしょうか?似ていますよね。
まず、面と向かってはサテオキ、事実・経緯をのべる(可視化する)ことは やったことそのものです。
わかったことはどうでしょうか?
- よかったこと、わるかったことをリストアップすること自体により、行動の是非・良し悪しがわかる
- 行動をうけた 自分の感情を向き合うことで、当時の自分の感情を客観視でき理解できる
- このまま相手の行動を放置しておくことの客観的な悪影響がわかる
- 相手の行動が変わることで期待できる良い効果がわかる
これだけのことがわかることになりますよね。すばらしい!今までわからなかったこと・もやもやしていたことが かなりすっきり明瞭に腑に落ちてわかってきますよね。
また、こうやってあらためて並べてみると、feedback wrapでは
もともと 相手=人間 を念頭においていますが、相手 = プログラム として
とらえなおしてみても 充分おもしろいとおもうのです。
相手の行動をプログラムの構造ととらえると、下の項目二つは リファクタリングしない・リファクタリングすることにより、それぞれの場合の影響の良し悪しに該当することになりますよね。
このように feedback wrapのフレームワークで今みているコードの状況を整理することにより、リファクタの判断・整理もできるようになります。
おわりに
以上、Management3.0 中のコミュニケーション手法である feedback wrap と、ふりかえりで用いる YWT法をとりあげ、
- feedback wrap と YWT法が似ていること
- わかるということには、一体どういうことなのか
をお話してきました。
最後に、伝える前に、まず落ち着いてふりかえってみることの大切さについて述べていきたいとおもいます。
とくに、相手からうけた悪い行動を伝える場合、どうしてもネガティブな怒りの感情にたかぶりがちです。この怒りを相手にぶつけても、残念ながら なかなか相手は変わりません。歴史をつらつらにみるに むしろ逆効果になっていったことがわかります。
一方、日本アンガーマネジメント協会によると「怒りのピークは長くて 6秒」といわれています(※1)
その間、怒りがしずまるまで単に待っているだけではなく、feedback wrapのフレームワークをつかって、一度ふりかえってみてはどうでしょうか?そうすると、単なる怒りの鎮まりだけでなく、いろいろな発見がつながるかもしれません。
もちろん、感情のたかぶりをおさえ落ち着いてすばやくふりかえることは 一朝一夕ではできません。とっさにふりかえりができるようになるまで 常日頃からの習慣化が欠かせないでしょう。そのためにも feedback wrapをさらにまとめた YWT法のふりかえりの習慣化が重要になってくるのではないでしょうか?
以上、なにかしらの参考になれば幸いです。
ではでは、よい開発体験を。
謝辞
本稿を書く機会をあたえ、なかなか筆がすすまない筆者を 書き上げるまで辛抱強くまっていただいた NuWorks合同会社の Stefan Nüsperlingさんに感謝します。
※1: たとえば どんな怒りも6秒でなくなる ただ、ここでいう怒りとは 持続的な恨み・つらみとはどうやらちがうようですし、少し調べたのですが 科学的な文献は見あたりませんでした。もしご存知の方はご教示ください。